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歯周病②(歯周病と早産と死産)

今回のテーマは「早産・死産」です。
歯周病が早産・死産に関係あることに驚く方は多いかもしれません。

しかし、実際に歯周病菌により赤ちゃんの早産・死産が引き起ることはあります。

歯周病

はじめに歯周病について少しおさらいします。

歯周病とは、プラーク(歯垢)といわれる細菌の塊の毒素により、歯茎に慢性的な炎症などが起こる病気です。
歯周病菌は酸素が苦手で、酸素の少ない歯と歯・歯と歯茎の隙間を好み、その隙間が深ければ深いほど細菌にとって住みやすい環境になります。

普段は歯茎がこの細菌たちが体内に侵入するのを防いでいます。
しかし、身体の免疫が弱っていたり歯周病により炎症が起きていたりすると、歯周病菌や炎症性物質が血液に侵入しやすくなり、血流によって身体全体へと運ばれてしまいます。
これによって歯周病菌はお口の中だけではなく、体全体に悪影響を及ぼしてしまうのです。

では、どのようにして歯周病が早産・死産を起こすのか見ていきましょう。

歯周病と死産

まず、歯周病によって早産・死産を起こす原因の一つがフソバクテリウム・ヌクレアタムと呼ばれる、歯周病菌のなかでもたくさん存在する細菌です。

ごくありふれた口腔内細菌ですが、悪条件が重なると死産や早産を起こしてしまいます。

海外の産婦人科学誌で紹介された症例では、39週と5日のアジア人女性の妊婦さんが、歯肉縁下のプラークに存在していたフソバクテリウム・ヌクレアタムが子宮に移動して胎児に感染したことにより、胎児が肺炎と敗血症を起こして死産になってしまいました。

妊娠中に歯肉からの出血を起こしていた(歯周病があった)妊婦さんで、死産数日前にかかった上気道炎により免疫力が弱ってしまった結果の感染ではないかという考察ですが、悪条件が重なることによりフソバクテリウム・ヌクレアタムが死産を招くこともあることを示した症例です。

歯周病と早産

次に、フソバクテリウム・ヌクレアタムと早産の関係についてです。

ある研究では、早産の兆候が見られる妊婦さん46名の羊水の培養のうち21名の方から細菌が検出されました。
最終的に早産になってしまった方は44名であり、早産になってしまった約半分の方の羊水から細菌が検出されたということになります。
そして、その細菌のうち33.3%がフソバクテリウム・ヌクレアタムでした。

さらに、「歯周病と糖尿病」の記事でもお話ししましたが、歯周病によって炎症が起こると炎症性サントカインという悪玉ホルモンが慢性的に分泌されます。
このサントカインがプロスタグランジンという、子宮を収縮させる作用のある物質の分泌を促します。
陣痛はプロスタグランジンによって子宮が収縮されて起こるのですが、サントカインによってプロスタグランジンが分泌されてしまうと妊婦さんの身体は出産のゴーサインがでたと勘違いし、子宮が収縮されて早産を起こしてしまいます。

もちろん、歯周病であるすべての妊婦さんが死産・早産をするわけではありません。
しかし、歯周病になって歯茎から血が出た状態を放っておくと、口腔内の細菌が子宮に到達してしまったり子宮が収縮してしまう可能性がまれにあるのも事実です。

妊娠中はホルモンの影響で歯周病(歯茎が赤くなったり、腫れたり、出血するなどの症状)になりやすいため、普段からしっかりとした口腔ケアを行い、歯周病を予防していきましょう。
唾液でも感染する歯周病、ご自身だけでなく家族で予防に取り組むことも大切です。

何か気になる点がある方は気軽に当院までお尋ねください。

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